まず、この料金で4本も噺が聞けるのは非常にお得ですし、若くて活きのいい江戸落語は真打さんたちとはまた違った味わいがあると思ったのです。朝10時から落語だけ聞けるというのも用事の多い地方者にとっては嬉しいです。
4人の二ツ目さんの噺が聞けますが、タイプの違う人を組んでいて、それぞれの個性を楽しむことができました。ただし若い人ばかりだったせいか、噺の中の主人公は若旦那や若衆、若い大工などで似た風味の噺が続きました。
また、残念だったのは、「ウケること」ばかりを気にしていて、噺を「聞かせる」ということが少しお留守になっているのではないかと感じました。落語って笑うばかりではなく、話芸を楽しむものだと思います。笑わなくても、噺家さんの作り出す異空間に引き込まれていくことで、充分楽しめるし、何も声を出して笑うことだけが笑いではないように思います。
10年以上前、浪人生だった時分、どうにもこうにも思うように描くことができず、いたたまれずに逃げ出して、お決まりの池袋の街を徘徊して、ふと目に留まったのが演芸場でした。それが私の初めての生の落語との出会いでした。
その時の真打ちさんの噺の内容も名前も薄れているのですが、芸は今でも鮮やかに記憶に残っています(たぶん「三井の大黒」、柳家三語楼)。噺の中の大工や大工の彫る彫刻の迫力が、ありありと目に浮かんでくるような、絶妙な話し方でした。能楽の狂言の語りを聞くの似た引力を感じました。その噺に元気をもらって、次の日からがんばれました。
それ以降、生で落語を聞くことなくラジオやテレビなどで聞いていましたが、中国に行く前になるべく多くの日本の伝統芸能に触れておきたかったので、東京に出た時に鈴本に行ってみたのでした。
今、
iPodで落語を聞くことが密かに流行っていますが、これは確かにいいです。図書館からまとめて借りてきて、
iPodに入れておくといつでも好きな時に手軽に落語が楽しめます。
iTMSなどで落語家さんが噺を音声ファイルにして販売してくれたら、海外にいても簡単に聞くことができるでしょう。若手なら、スポンサーをつけてネットラジオで週代わりで落語の放送をすれば、安い設備投資で多くの人が噺を聞くことができると思います。
……落語は生で楽しむのが一番ですが。